1. はじめに
競売物件は市場価格より安く購入できるチャンスがありますが、落札価格だけで予算を組むのは危険です。実際には落札後に税金や諸費用が発生し、それらを見落とすと資金がショートする恐れがあります。本記事では、競売物件購入後に発生する主な税金と諸費用を、計算例や金額感を交えてわかりやすく解説します。
2. 競売物件購入後に発生する主な税金
2-1. 登録免許税(所有権移転登記時)
名義変更のための「所有権移転登記」でかかる税金。固定資産税評価額×税率で算出します。
- 税率:用途等で変動(一般2%、住宅用軽減で1.5%など)
- 計算例:固定資産税評価額1,000万円 × 2% = 20万円(軽減適用で15万円)
ポイント:評価額は落札額ではなく自治体の課税評価額です。
2-2. 不動産取得税(取得後半年〜1年以内)
取得から数ヶ月〜1年後に自治体から届く税金。請求が遅れるため取り置き必須。
- 税率:原則4%(住宅用軽減で3%)
- 計算例:評価額1,000万円 × 3% = 30万円
2-3. 固定資産税・都市計画税(翌年以降)
毎年1月1日時点の所有者に課税。購入年の按分は競売だと買主全額負担になることも。
- 標準税率:固定資産税1.4%、都市計画税0.3%(自治体で差あり)
- 計算例:評価額1,000万円 → 固定資産税14万円+都市計画税3万円=合計17万円/年
3. 競売特有の諸費用
3-1. 占有者の立退き費用
元所有者や賃借人が居住している場合、任意退去のための立退料が必要になることがあります。
- 目安:家賃2〜3ヶ月相当(例:月5万円なら10〜15万円)〜ケースにより数十万円
- 注意:合意書・領収書などの証跡を必ず残す
3-2. 残置物撤去費用
家具やゴミが大量に残るケースが多く、撤去は買受人負担です。
- 相場:2LDKマンションで10万円前後、戸建てで20〜50万円
- 例:木造戸建(3DK)で大型家電・家具・衣類を撤去し28万円
3-3. 建物の修繕・リフォーム費用
内覧不可のため、劣化が後から判明するリスク。予備費設定は必須です。
- クロス・床張替え:1室10〜20万円
- キッチン交換:30万円〜/ユニットバス交換:50万円〜
- 外壁塗装:80〜150万円、屋根補修:20〜80万円
3-4. 司法書士費・書類取得費
登記の専門手続きや書類取得にかかる費用。
- 司法書士報酬:5〜10万円+実費
- 住民票・印鑑証明・評価証明等:数千円〜
4. 税金・諸費用の目安と計算例(総額イメージ)
ケース:固定資産税評価額1,000万円/落札額900万円/空家だが残置物多数・軽度リフォーム
- 登録免許税(住宅用軽減1.5%)= 15万円
- 不動産取得税(3%)= 30万円
- 固定資産税・都市計画税(年額)= 17万円
- 残置物撤去= 25万円
- 内装リフォーム(クロス・床・トイレ交換)= 80万円
- 司法書士報酬・実費= 6万円
合計:約173万円(落札額とは別枠)。このほか給湯器故障や配管不良など突発費用も想定しておきましょう。
5. 購入後に備える資金計画のコツ
5-1. 想定外費用のための予備費
競売は現況引渡しが原則。修繕や撤去で想定外が出やすいため、初期見積の+20〜30%を予備費として確保するのが安全です。
5-2. キャッシュフローへの影響を把握
賃貸運用前提なら、初期費用回収までの期間(回収年数)を試算。固定資産税・保険料・管理費・空室リスクも織り込んだ実質利回りで判断しましょう。
6. まとめ|「落札額+α」で総投資額を設計する
競売物件は安く買える一方、落札後には税金や競売特有の諸費用が必ず発生します。落札額だけで判断せず、総投資額を前提に資金計画を立てることが、失敗しない最大のコツです。特に初心者は、立退き・残置物処理・修繕費の目安を事前に把握し、費用シミュレーションを行ったうえで入札に臨みましょう。
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