競売物件の下見とは?目的と制約
競売の下見は一般の内覧と違い、原則として室内に入れません。敷地外から見える範囲と周辺環境の確認が中心です。だからこそ、事前に三点セット(物件明細書・現況調査報告書・評価書)で仮説を立て、現地で検証する流れが重要になります。
例:現況調査に「屋根一部破損」の記載→下見では双眼鏡で屋根面の反り・割れ・錆を確認し、補修費を見積もる。
下見前に準備すべき資料と道具
三点セットの読み込みと仮説作り
- 築年数・構造(木造/RC)と外壁・屋根材の種類
- 接道状況・土地形状・高低差
- 占有者の有無・明渡し難易度
- 室内/外観写真から劣化・残置物の量を推測
仮説例:築30年木造・外壁にクラック→基礎沈下の可能性あり(上限入札に補修費を上乗せ)。
持ち物チェック
- 双眼鏡:屋根・2階外壁の確認に必須
- スマホ/カメラ:高解像で撮影し後で拡大確認
- メジャー:接道幅・駐車スペース寸法
- メモ帳/チェックリスト:気づきをその場で記録
- 軍手:境界標や地面周りの確認時に安全確保
外観から読み取る建物チェックポイント
屋根の劣化
色あせ・反り・割れ・板金の錆・棟の浮きは雨漏り予備軍。築20年以上は塗装や葺き替えの想定を。
外壁のひび割れ/剥離
0.3mm以上のクラックは構造影響の可能性。打診跡や補修痕の有無も確認。
基礎の沈下/亀裂
斜めクラック、基礎と外壁の段差、犬走りの割れは不同沈下サイン。改修は数十万〜百万円超も。
窓・サッシと防犯性
サッシの歪み・建付け不良・鍵の種類。賃貸化なら防犯ガラス/補助錠の追加コストを見込む。
周辺環境の確認
交通/生活利便性
駅・バス停・買物施設を実歩で確認。坂道や信号待ち時間などマップに出ない負担もチェック。
騒音・振動・臭気
昼夜・平日休日で複数回確認が理想。工場/飲食店/幹線道路/線路の影響は時間帯で変わる。
近隣関係の兆候
張り紙・私物はみ出し・ゴミの放置など、トラブルの匂いがないかを観察。長期空家の雰囲気も要注意。
危険サインの見抜き方
放置痕(雑草・ゴミ堆積)
胸高の雑草、ポストの未回収郵便は長期放置のサイン。内部劣化や配管詰まりを疑う。
不法占拠/無断駐車の痕跡
常時停車・私物散乱・夜間の明かりなどは占有リスク。引渡しに時間/費用がかかる可能性。
雨漏り/地盤の兆候
外壁シミ、庇の腐朽、基礎の段差は要警戒。三点セット写真と照合し、変化があれば劣化進行の証拠。
反社/犯罪リスクの匂い
目隠し過多、監視カメラ多数、出入りの異常さなど違和感があれば回避を検討。
下見記録の取り方と活用方法
効率的な撮影順序
- 敷地全景(近景/中景/遠景)
- 正面・左右・背面の外観
- 屋根・2階外壁(ズーム/双眼鏡)
- 接道・歩道・境界・駐車場
- 周辺道路と生活施設
動画で残すメリット
歩行動画は音環境や導線の記録に有効。近隣のプライバシー配慮と撮影マナーは厳守。
入札額への反映(逆算式)
入札上限 = 推定市場価格 −(修繕費+撤去費+登記/税+必要利益+予備費)
例:市場1,500万 −(修繕80万+撤去25万+税登20万+利益200万+予備150万)= 1,025万円が上限。
きりの良い数字(1,030万等)は避け、1,023万8,000円のように僅差勝ちを狙うのも有効。
ミニケース:下見で拾った情報が勝敗を分けた例
郊外4LDK。三点セットは「残置物多め・屋根一部破損」。下見で棟板金の浮きと基礎の微細クラックを確認、補修計55万を積上げ。夜間騒音なし・駐車2台OKを押さえ、上限1,150万→入札1,138万8,000円で落札。賃料9.0万/月で早期成約。数字と現地補正が奏功。
まとめ|下見+三点セット+市場調査でブレない入札を
競売の下見は「外から読む力」を鍛える作業です。三点セットで仮説を作り、現地で検証、数字で上限を決める。
内部が見えない前提でも、危険サインの検知と費用の逆算を徹底すれば、落札後のギャップを最小化できます。感情ではなくデータで入札しましょう。
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